タイ王国の商標事情

第17回 タイの一村一品活動

地域ブランド商標保護のための商標法一部改正が日本でも来年から行われるが、タイはもともと「御当地」商品についての関心度が非常に高い。それを示す好例が「OTOP」活動で、いまや国をあげてのビッグ・プロジェクトとなっている。

OTOP というのは、「One Tambon One Prodcut」の略語。Tambonは「群、村」を意味するタイ語。つまり、一村一品運動ということ。タイの文化と技術を活かした商品を全国レベルに引 き上げていきましょう。技術交流もしていきましょう。ついでに、インターネットビジネスも展開していましょうというこの活動は、実はもともと日本の大分県 のキャンペーン活動にヒントを得て始められたもの(1979年に大分県で始まった一村一品運動は、タイに限らず世界各地で導入されている)。

政府として、OTOP運動と銘を打って各地方の村おこしを先導するからには、年に一度多きなOTOP博覧会とでもいうべきイベントが開催されている。

日 本の幕張メッセを彷彿とさせる大きく立派なイベント会場に、タイ全土から集められたOTOP商品は繊維品から食品、木工品と多岐にわたる。もともとシルク で有名なこの国のこと、タイシルクの洋服や、テーブルクロスなどが目につく。コットンの産地である北部からはコットン商品が多く展示されている。そのほ か、カゴ細工が多いのもお土地柄か。それにしてもかご、アロマオイル、ココナツチップス、これ、全部原材料はやしの木だ、木1本でここまでいろいろなもの が作れてしまうのかと関心してしまう。一枚板に彫刻をほどこした重厚な家具や、ユニークなパッキングを施した商品が並ぶ展示会場は、タイの優れたデザイン 力をみせつけているようだ。

古くから各地方に伝わる伝統工芸品は今でも大切に生産、使用されている。OTOP 商品が一堂に集まっている様を見ると、タイではなぜフォークロアを保護すべきだと強く叫ばれているのか理解できる。古いものを自分たちのものとして大切に 守っていきたいという背景がはっきり見えるのだ。

一方、なかなか新しいものを作り出せない苦労もうっすらとうかがえる。最初は、日本では見られないタイの特徴 的なデザインや商品群に目を奪われて関心ばかりしていたのだが、OTOP商品展示会場を一回りするうちに、同じような商品やデザインが並んでいることに気 づくのだ。時代の最先端をいくような商品は残念ながら見当たらない。タイでデザイン保護に関する知財セミナーをよく開催するフランス人の言葉が耳に残っ た。「情報の交換、開示を進めるだけではだめ。似たようなデザインの商品ばかりができてしまう。新規なデザインをどう作り出していくのか、新しい商品開発 をどうやって進めていけばよいのか、を指導していくことがこの国では大切なんだ。」

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