商標出願は、出願後、審査に至るまで、概ね4ヶ月から8ヶ月程度を要しますが、所定事項を記載した「早期審査に関する事情説明書」を提出すると、特許庁にて選定の結果、早期審査の対象となった案件については、審査官は速やかに審査を開始し、その後も遅滞なく処分が終了するよう、審査・審判手続が進められます。この早期審査制度は、従来よりありましたが、早期審査が認められる要件等について見直しが図られた結果、従来よりも早期審理の対象が拡大されました。
<早期審査の要件>
出願時・登録時に特許庁への支払いが要求される印紙代が従来より43%ほど減額となり、更新登録料に至っては、68%の減額となりました。
区分の数 | 現行料金 | 改正後料金 | 差額 | 割引率 |
---|---|---|---|---|
1 | \21,000 | \12,000 | \9,000 | 42.86% |
2 | \36,000 | \20,600 | \15,400 | 42.78% |
3 | \51,000 | \29,200 | \21,800 | 42.75% |
4 | \66,000 | \37,800 | \28,200 | 43.03% |
5 | \81,000 | \46,400 | \34,600 | 42.72% |
10 | \156,000 | \89,400 | \66,600 | 42.69% |
45 | \681,000 | \390,400 | \290,600 | 42.67% |
区分の数 | 現行料金 | 改正後料金 | 差額 | 割引率 |
---|---|---|---|---|
1 | \66,000 | \37,600 | \28,400 | 43.03% |
2 | \132,000 | \75,200 | \56,800 | 43.03% |
3 | \198,000 | \112,800 | \85,200 | 43.03% |
4 | \264,000 | \150,400 | \113,600 | 43.03% |
5 | \330,000 | \188,000 | \142,000 | 43.03% |
10 | \660,000 | \376,000 | \284,000 | 43.03% |
45 | \2,970,000 | \1,692,000 | \1,278,000 | 43.03% |
区分の数 | 現行料金 | 改正後料金 | 差額 | 割引率 |
---|---|---|---|---|
1 | \151,000 | \48,500 | \102,500 | 67.88% |
2 | \302,000 | \97,000 | \205,000 | 67.88% |
3 | \453,000 | \145,500 | \307,500 | 67.88% |
4 | \604,000 | \194,000 | \410,000 | 67.88% |
5 | \755,000 | \242,500 | \512,500 | 67.88% |
10 | \1,510,000 | \376,000 | \1,025,000 | 67.88% |
45 | \6,795,000 | \2,182,500 | \4,612,500 | 67.88% |
「小売等役務」の登録制度が2007年4月1日より開始しました。
「小売等役務」というのは、商品の小売または卸売業に携わる人が、
商品を販売するに際して顧客に対して行うさまざまなサービスのことを
いいます。
こんなサービス提供をしていませんか?
(ひとつでも該当したら「小売等役務」の商標登録を検討することをお勧め
します)。
(例)
<登録するにはどうしたらいい?>
特許庁に対して、商標登録出願を行います。
商標登録出願は、先願主義(最先に出願した人のみが登録を受けることができる、いわゆる「早いもの勝ち」主義)によりますから、一刻も早く出願すべきですが、2007年4月1日から2007年7月2日までに提出された「小売等役務」の出願については、「同日出願」扱いされることになっています。
すなわち、特例期間中に出願された小売等役務を指定役務とする出願同士が競合する場合、出願人は、2007年4月1日以前から、出願商標を「不正競争目的を持たずに、小売等役務について使用していた」こと、すなわち「使用に基づく特例の適用」を受けることで、登録のチャンスを広げることができます。
<「使用に基づく特例の適用」ってどんなもの?>
「小売等役務」について商標Aを出願したところ、同一・類似の商標Bの出願と競合した。もしAが「使用に基づく特例の適用」を受けたら?
原則として
されることになります。
<「使用に基づく特例」の適用を受けるためにはどんな書類が必要?>
「使用に基づく特例」を受けることができるのは、以下のすべての条件を満たすときのみです。
①出願に係る商標が使用されていること
②出願に係る商標が2007年3月31日以前から使用されていること
③出願に係る商標が日本国内において使用されていること
④出願に係る商標が小売等役務について使用されていること
⑤出願において指定した小売等役務が④の小売等役務であること
⑥上記①~④の商標の使用が出願人によるものであること
これらを証明する証拠として有効と考えられるものは、
商標が付されている「店舗内の各階の売り場の案内板」の写真 、「販売コーナーを示す看板」の写真、「ショッピングカート」「買い物かご」の写真、「陳列棚」「ショーケース」の写真 、「接客する店員の制服・制帽・名札」の写真、「試着室」の写真、「商品カタログ」写真、「取り扱い商品」の写真、「包装紙」「買い物袋」の写真、「会計用レジスター」の写真、インターネット通販における「顧客の操作するコンピュータディスプレイ画面」の写真、「電車のつり広告」「新聞広告」「商品カタログ」「折込チラシ」等などが考えられます。
提出する証明書の数について特に制限はありません。が、確実に審査官に、使用状況が理解してもらえるよう、複数のものを集めて提出するほうが確実です。
<「使用に基づく特例の適用」を受けたら、絶対登録されるもの?>
基本的に、「使用に基づく特例の適用」を受けた商標出願は、他人の周知商標と同一・類似であったとしても、自分の出願も周知であるかぎり、登録を受けることが可能です。つまり商標法4条1項10号に該当するとの扱いはなされません。しかし、他人の商標が、使用の特例適用出願に係る商標よりも著名である場合には、「出所混同を生ずるおそれがある」との理由によって登録を受けることができなくなります。 つまり、競合する相手の使用状況によっては、「使用に基づく特例の適用」を受けても登録されない場合もあり得るというわけです。
<「小売等役務」と「商品」は類似するの?>
さらにもうもう一つ、注意しておかなければならないことがあります。
デパートに代表されるいわゆる総合小売(衣料品、食料品、生活用品等全般を一括して取り扱う小売業のこと)を除き、「特定小売役務」とその特定「商品」は、類似するものとして扱われます。
役務「織物の小売」は商品「織物」と類似する
役務「酒類の小売」は商品「日本酒」「ビール」「果実酒」等と類似する
「小売等役務」同士の出願が競合する場合には、同日出願の取り扱い、使用に基づく特例の適用、といった措置を受けることができますが、「小売等役務」と「特定商品」の間ではそれらの措置の適用を受けることができません。
「被服の小売」と類似する指定商品「被服」について、他人の出願が先行すると、残念ながら、登録を受けることはできません。
<「小売役務」の類似範囲 >
なお、「特定商品の小売」同士でも類似する扱いがなされることもあります。 「織物および寝具の小売」と「被服の小売」「履物の小売」「かばんの小売」「身の回り品の小売」は互いに類似するものとして扱われます。
総合小売(デパートに代表される、食品、衣料品、一般雑貨全般を一括して取り扱う総合店)の役務は、他の役務・商品と類似するものとして扱われません。つまり、「総合小売」役務を指定役務とする出願同士のみで、先後願判断がなされます。
他方、「特定商品の小売」役務は、当該「商品」と類似すると扱われるうえ、他の「特定商品の小売」役務とも類似と判断されます。
たとえば、「被服の小売」役務の場合、「被服(商品)」「織物の小売」「寝具類の小売」「履物の小売」「かばん類の小売」「身の回り品の小売」と類似すると判断されることになります。
<小売等役務関連ビジネスはしているけれど、権利化しなかったら?>
小売制度が導入される以前から、小売業、卸売業を行っている継続して商標を使用している人には継続的使用権が認められます。もちろん、その使用に不正目的があってはいけません。この継続的使用権というのは、小売等役務について商標権を持っている人に対する抗弁権という性質の権利で、従来の使用状況によって、種類が異なります。
小売・卸売業について継続して使用している人:
2007年4月1日の時点で、その業務を行っている範囲について、抗弁権の主張が可能。
(2007年4月1日の時点で、「被服の小売」を行っている場合には、「被服の小売」の役務範囲内にて抗弁が可能)
小売・卸売業について継続して使用しており、その商標が周知・著名の場合:
小売制度導入時の業務範囲に限定されることなく、その商標について使用することが可能。
(2007年4月1日の時点「被服の小売」のみについて商標を使用していたが、その商標は需要者等に広く知られていたという場合には、「被服の小売」のみならず、「靴の小売」「食品の小売」等まで業務の範囲を広げることが可能。)
ただし、この継続的使用権は、他人の「小売等役務商標」についてのみ抗弁し得る権利であり、通常の「商品商標」「役務商標」について抗弁し得るものではありません。