タイ王国の商標事情

第14回 タイの知財 模倣品取締りの現場 2 (法律事務所の活動)

前々回(第 2回)、この誌面にて、模倣品の取締りの現場について紹介した。模倣品を取り締まる行政機関は、経済警察(ECID:Economic Crime Investigation Division)。行政の動きがわかりやすそうで、実はいろいろと細かい手続きやノウハウが必要で、なかなか一筋縄にはいかない、というのはどこの国で も同じこと。模倣品の氾濫に苦しむ各企業が自身のみで経済警察に救いを求めるのはちょっと難しい。実際、多くの企業が、模倣品対策に関し、専門家にアドバイスを求めている。

今回は、企業と経済警察の橋渡しの役目を担う専門家 ( 法律事務所 ) に話を聞いた。丁寧に質問に答えてくれたのは Tilleke & Gibbins International Ltd(*1). のMr.Edward Kelly(*2)とそのセクレタリーであるMs. Sukontip Jitmongkolthongだ。

1. 模倣被害の実態調査
第2回の記事の中でも紹介したが、模倣品対策の流れはまず「模倣品の発見」に端を発する。その後「模倣被害の実態の調査」、「具体的な対策案の検討」といった流れで進んでいく。

「模倣品の発見」はいかになされるのか。

非常にベタな話だが、会社員がたまたま(あるいは、意図的に探し回って)街中で自社製品の偽物を発見するのが一般 的。 消費者からの情報による場合もある。中国等模倣品対策が盛んにおこなわれている国では、懸賞広告(「偽物を見つけたら連絡してください。お礼に○○円支払 います」)を掲載する企業もある。

偶発的に「模倣品を発見」できても、「模倣被害の実態」は積極的に取り組まなければわからない。ここで正確に実態を把握することこそ、模倣対策の成功の秘訣でもある。 そこで、(Mr.Kelly) の出番となる。

2. 専門家の役割

3. レイド申請の秘訣

4. モチは餅屋?
さすがに(Mr.Kelly)は侵害事件を数おおく手がけているだけあって、その説明もわかりやすい。侵害対策に苦慮 するのはもちろん企業だが、実際になんらかのアドバイスやアクションが必要になる際、専門家によるアドバイスは必要だ。彼に限らず、タイ国内には、こうし た手続をおこなう専門事務所も存在する。また知財の獲得に必要手続の代理、コンサルタントをする弁理士、弁護士もいる。もちろんIPAAのような民間団体もいろいろな情報を提供してくれるはずだ。とりわけ知財の世界は情報入手が一番重要。困ったことがあれば専門家に相談するのがベストの選択だ。どの専門家でも費用がかかる場合には、事前にその旨および費用概算を教えて くれる。 費用が心配で二の足を踏んでいるうちに侵害による被害が深刻なものにもなりかねない。法律事務所は敷居が高いなどと思わずに、気軽に訪ねるべきなのだ。

本原稿は、磐谷日本人商工会議所発行の「所報」に掲載された記事を改変・転載したものです。

注釈

(*1)
Tilleke & Gibbins International Ltd.
Tilleke& Gibbins Building 64/1 Soi Tonson, Ploenchit Road, Bangkok 10330,Thailand
Tel: (66) 2263 7773 Fax: (66) 2263 7710 <<

(*2)
A partner and Director of IP Enforcement, Licensing and Transactions of Tilleke & Gibbins International Ltd. Edward Kelly himself has been identified by the AsiaLaw Leading Lawyers Survey as one of Asia's leading business lawyers in the area of intellectual property.<<

(*3)
「知財」という言葉で一くくりしてしまうと非常に簡単だが、知財権はそもそも特許権、商標権、意匠権、著作権といったあらゆる権利の総称だ。 簡単に偽物か否かが判明できる権利であればそれほど真偽の確認に時間と労力を要しないのでその分費用も安くなるが、機械の構造など一見ではわかりにくい部分が権利の対象となっている場合には、その分費用も高くなるということだ。<<

(*4)
ちなみに彼の事務所におけるレイドの手続申請費用は((Mr.Kelly) の事務所のみならず調査費用とは費用体系が別になるのが一般的)1,500 US$から4,000US $くらいが目安。レイドの規模、事件の複雑さの程度によって当然費用はちがってくる。<<

(*5)
模倣品業者に対し、「私どもの権利の侵害に当たりますので、即刻かかる活動をおやめください」という趣旨のレター を送付すること。 タイ国内での侵害というと全てが悪意に基づく不正使用、フリーライドであるというイメージが強いが、実際、知財の侵害というのは、特別な悪意や意図なく起 きることもありうる。こうした場合には、訴訟まで起こさずとも穏やかに事件が解決することもある。<<

(*6)
元来ベルヌ条約の加盟国であるタイで著作権の保護が認められるためには、登録申請は要しない 。 が、自分が著作権者であるということを容易に証明する手段として登録申請は有効だ。<<

(*7)
要するに、申請人側に相当の権利があることを証明する書面である。<<

(*8)
このほか、手続代理を法律事務所に依頼する場合には、委任状の添付も必要になる。典型的な委任内容は
「“the attorney will have the right to defend our intellectual property rights from infringement or attack whether by way of civil court or criminal proceedings or other wise; to file criminal charges or complaints with the Police Authorities andto file, prosecute, defend and carry to completion in the Courts against any naturalor juristic person concerning our trademarks, patents and copyrights.” <<

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