コピー品のメッカとして悪名高いタイだが、タイの政府だってこの悪名をそのまま甘じて受けているわけじゃない。いろいろな模倣品対策は講じている。その一つが経済警察(ECID:Economic Crime Investigation Division)の設置だ。
ECIDは経済犯罪に関する特別警察で、著作権侵害、特許権・商標権侵害等を扱うだけでなく、関税、所得税に関する犯罪や、金融犯罪等についても特別なセクションを設けて専門に扱っている警察だ。
このECIDのCommanderであるMr. Suchart Kanchanavisesによれば、日本企業に関連する商品の中でもっとも模倣されやすい(模倣品としての人気が高い)商品は、自動車部品と化粧品だそうだ。
-じゃあ、重点的にそれを取り締まってるんですか?
「まあ、がんばってはいるが、そもそも取締とか、差し押さえには、被害者の告発が必要だ。また差押を成功させるには権利者とかDIP(商務省知的財産局)の協力、情報の提供がないと…。」
―どんな情報が必要なんですか?
「本物か偽物かを見極めるための判断材料としての情報が必要。そうじゃないと警察で本物かどうかなんてなかなか見分けがつかないし。とりわけ最近は、模倣 の仕方も巧妙だし組織犯罪も増えているしねえ。ヨーロッパ企業に比べると日本企業は情報の出し方が上手。きちんとした情報提供をしてくれるのでありがた い。」
レイド(差押)の後、告発者側は差押物品が本物かどうかの鑑定をする。その間、容 疑者は取調を受ける。一説によると告発者、容疑者とも同室で待機なんてこともあるそうだ。が、容疑者の心は怨恨一色のはず。そんな容疑者とよりによって警 察で鉢合わせするなんて告発者側にとってはたまらない。
「なぜ同室に収容するかって?その方が鑑定するとき便利だからです。そもそも権利 者側は差押の現場に同行しなければいけないわけだし、いずれにせよ必然的に容疑者と顔を合わせることにもなるし。「怖いからやだ」と思うなら、弁護士を立 てて自分はその場に出向かないという方法も可能です。」
むむむ。弁護士の命はどうなるんだろう…。
知財に関する犯罪の多くは商標権と著作権。著作権に関してはECIDでは、どうやらADRを推奨している雰囲気がある。時間もかかるし、所詮、得られる損害賠償額も知れているというのが理由らしい。
なお、侵害の取り締まりをECIDに頼むとその後Reward(褒賞金)をECIDに要求されることもあったらしい。
―なんですか、このreward制度って?
「もともとはたいへんな思いをして取締りにあたるECIDに褒賞金をだしてあげたらいいのになあ、というワタナ大臣の提案がきっかけではじまった制度。著 作権協会がrewardを払ったのが始まり。今では廃止になっている制度だが、今なお海賊版CD1枚につき2バーツのrewardを要求しようか、などと いう話は残っているねえ。具体化するとも思えないけど…。」
<IPandIT裁判所に出訴された件数一覧2001年度>
出典http://www.cipitc.or.th/
ECIDに関する情報
Satorn Road, Bangrak Bangkok 10500 (実はこのECIDは模倣品通りで有名なパッポンのすぐそばにある)
Tel:+66 (0)237-1199 Fax:+66 (0)234-6806
http://www.ecid.police.go.th/