タイ王国の商標事情

第2回 模倣品を探る(2) 海賊版CD

「模倣品街」で名高いパッポン通りに限らず、至るところで売られているのが、海賊版CDだ。

これは有名ブランドの偽物バッグなどとは違って、明らかにタイ人をメインターゲッ トにした商品だ。海賊版CDはちゃんと(?)本物のCDジャケットをカラーコピーした紙のパッケージに入って売られている。1枚100バーツ(300円く らい)から。主なコンテンツは洋楽だ。ついでタイの音楽CD。日本のCDは思いのほか見当たらない。が、一方海賊版DVDとなると日本製品のコピーも出て くる。日本人なら誰でも子供時代にお世話になった変身物のドラマや映画のコピー品が売っている。やっぱり100バーツ(300円)くらい。もちろんハリ ウッド映画の海賊版も多い。タイ語音声のみが収録された海賊版も多いそうだ。

タイの知的財産権に関する事件を専門に扱うIP&IT裁判所が1年間に 扱った事件の件数が公表されているので調べたところ、2001年度に同裁判所が扱った知的財産に関する事件は、刑事事件54件、商標事件1895件、著作 権事件1293件、特許事件10件。商標事件と著作権事件が群を抜いている(http://geocities.com/cipit_estat/)。

海賊版対策の策として、タイの音楽業界では本物のCDを130バーツ程度で売って いる。価格格差が縮まれば海賊版が少なくなるという計算だ。アメリカ音楽業界もタイでのCDは価格をかなり下げて売っている。なるほど、世界同時発売のボ ンジョビ様の新譜も日本では3200円だったけど、タイでは300バーツ(900円)だった。ちなみに、日本製のCDの値段は500バーツと高めの価格設 定だ。こんなに高いのに海賊版の被害も少ないってどういうこと?「そりゃ、この国に日本の音楽があんまり進出してないからだよ。」在タイ歴2年弱の日本人 が教えてくれた。そういえば正規のCD店でも日本のCDはそれほど多く置かれていない(総合デパートの中の結構広いお店でも3枚しか見つからなかった)。

1ヶ月ほどバンコクに暮らして、日本の曲を聴いたのは、1回だけ。カラオケだってあるのに、不思議。日本のドラマだって吹き替えで放映されたりしているのになぜ音楽だけ遅れているのかしら。

一般的なタイ人の収入に合わせて値下げをした音楽業界と違って、世界統一価格を維 持しているのがソフトウェアの部門だ。結果、コンピュータプログラムのコピー商品も数多く出回っている。バンコクで働く日本人に聞いたら、冷静な分析とと もにこんな言葉が返ってきた。「本物のプログラム使っている人って見たことないです。だってコンピュータなんて大学生とかが使うじゃない。彼らのお小遣い じゃとてもじゃないけどあんなに高いソフトウェア買えないもの。大卒初任給が6000バーツ(18000円)なのに、コンピュータソフトが16000バー ツ(48000円)なんて、冗談みたいな価格だもん。」

某OS会社は、世界標準価格よりタイでの販売価格を40米ドルほど下げたそうだ。それでもまだまだ、この国の物価とは隔たりがある。模倣品は叩くべし。とはいえ、ただ叩くだけでは根本解決にはならないのかも。

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