タイの知財を語るならばやはり「模倣品」の話題は欠かせない。語るためにはやっぱり自分の目で確かめなきゃ。
「模倣品ならナイトバザールだよ。」と教えてもらい、早速、偽物で有名な夜のパッポン通りに行ってみた。この通りで横行している模倣品は、主に時計やバッグ、シャツだ。通りに入るとバッグ屋の露店が目に付く。
が、店頭に飾ってあるのは、いずれも無名の商品ばかり。偽物のブランド商品を飾る店はほとんどない。が、たいていどこの店にもブランド品の写真をはさんだ透明のホルダが置かれて客が通るたび店員はそのホルダを見せて、「おいで。おいで。」と合図する。「これが見たい」とホルダの商品を指すと奥からその商品のそっくりさんを持ってきてくれる。「値段は安くしておくから」だって。「偽物でしょ?」と聞くと「もっちろん」と即答されてしまった。
次に時計を見てみることに。時計といえば日本製だって 超有名。きっとあるだろうなあ、やっぱりあった。バッグと違い、偽物時計は店頭にきれいに並べてある。のぞいたお店では、店員さんが「本物だよ」と言い張 りながら、「ロレックス」の偽物を15,000円で売りつけようと躍起になっていた。見た感じ粗雑な感じもしない。が手にとると明らかに軽い。うわぁ安っ ぽい。衣料品は、ブランド品の偽物というより著名・周知商標を悪用したいわゆる「pollutionシャツ」が全盛だ。目についたのは「スターバックス」 の女神様のロゴを利用して「STARBACKS」を「FREESEX」に変えたもの。まあ、お下品。誰が着るんだろう。そんなTシャツ。
スターバックスと並んで目に付くのは、キャラクター物 のTシャツだ。ちゃんと許可を得ているであろうTシャツ(タグに(C)マークが入っていたので、真正品と信じるならば)もあるが、カラーコピー原稿を使っ たものと思しきTシャツもある。模倣品は売るほうも悪いが、買うほうも悪い。需要があるから供給されるのが商品なのだから。パッポン通りに限っていうと、 客の大半は外国人観光客のようだ。模倣品を出すこの国はけしからんとか、政府が文句言ってる一方でその国民がコピー品を買いに来るなんて…。
場所を変えて、バンコクから250キロほど離れたホアヒンという街(金持ちのタイ人が週 末に来る別荘地として有名)のナイトバザールに行ってみた。さすがに都心から離れているせいか、衣料品やバッグ、時計の偽物の姿はない。が、代わりに見つ けたのが、携帯電話のボディーパーツ。「NOKIA9290」やら「NOKIA8300」と書かれた紙の下にずらりとボディーパーツが並んでいる。キティ ちゃんやスヌーピー、あられちゃんといったキャラクターの絵が描かれている。そうかあ、自分の携帯電話と同じ品番のボディーパーツから好きな絵柄を選んで 代えられるんだ。うーん。
ほかにもキャラクター権との関係でどうかと思うという 商品がずらり。テレビや雑誌でおなじみのキャラクターのキーホルダーがところ狭しと並んでいる。別荘地というお土地柄、外国人観光客もよく訪れる地域だ が、こうしたコピー商品の需要者層は地元の人。周りを見回すと外国人が目を光らせているのは、食べ物ばかりで、コピー品には目もくれない。ふうん。場所に よって購買層が違うのか。
後日、バンコクに戻って地元の人に聞いてみた。「タイの人ってさ、パッポン通りで買い物するの?」「たまにはするよ。だって安いもの。タイ人安いもの好きだから。僕だって時計買ったよ。安かった。これセイコー。」そりゃ、間違いなく偽物だろうなあ。